製作年:1993年

2009/01/22

その木戸を通って

製作年:1993年
製作国:日本
監 督:市川崑

冒頭の映像から圧巻だ。ふと浮かびあがる正四郎(中井貴一)の姿に、思わず惹きつけられてしまう。徐々に正四郎が何をしているのか明らかになっていくのであるが、この場面だけで、どんな映画か十分に表現しているような気がする。ふさ(浅野ゆう子)は、一体、どこから来て、どこに消えてしまったのか。市川監督の系譜から言えば、「竹取物語」(1987)や、「つる 鶴」(1988)に繋がる寓話かもしれないが、SFドラマを時代劇に応用した話のようにも感じる。無理に説明を加えないところも良く、所在の定まらないふさを受け入れた正四郎の気持ちが切々と伝わり、哀感で心いっぱいになる。

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2008/11/01

ウォレスとグルミット ペンギンに気をつけろ

製作年:1993年
製作国:イギリス
監 督:ニック・パーク

“ウォレスとグルミット”シリーズの旧作、「チーズ・ホリデー」(1989)、「危機一髪」(1996)、「おすすめ生活」(2002)をまとめて見たが、一番気に入ったのは「ペンギンに気をつけろ」でありました。珍妙な発明を続けていながら、どこか少し抜けている英国紳士ウォレス。家計の助けになればと、部屋を間貸しすることになるが、下宿人はなんとペンギン。この登場シーンが名場面。何故、ペンギンが下宿を申し込むのか。不思議でならないが、グルミットのキャラクターもそうであるように、リアルであって、どこかリアルでない不思議なパラレルワールドを実感する。そこからの展開は、クレイ・アニメであることを忘れてしまうくらい物語に引き付けられてしまいました。

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2005/11/07

機動警察パトレイバー2 the MOVIE

製作年:1993年
製作国:日本
監 督:押井守

2002年。謎の戦闘機がミサイルで横浜ベイブリッジを爆破する。それが自衛隊機であると報道されたことから、警察と自衛隊の対立を招き日本は緊張状態に陥る。警視庁特車二課の後藤は1999年、東南アジアでのPKF任務後、行方不明になっている元自衛隊員、柘植をこの事件の容疑者と特定し捜査を開始するが…。

パトレイバーシリーズといっても前作同様、レイバーが活躍するアクションは少なく、犯罪ドラマとしてゾクゾクするような興奮に満ちている。しかも特車二課のお馴染みの面々はバラバラになっており、コメディー的要素は押さえられている。

また「俺達は何を守ろうとしているのか?」というテーマ性が確固に全編貫かれて、ポリティカル・スリラー映画としても完成度は高い。「正義の戦争か、不正義の平和か」という問い掛けも深く胸に響く。事件究明を追い続けるミステリー展開もよく、荒川という陸幕調査員と後藤隊長とのやりとりも秀逸。南雲隊長の過去がドラマに絡んでくるなど大いに魅了されるドラマ展開であった。

そして、東京都内の日常生活の中に戦車が置かれているというシュールな風景にも峻然とした思いになる。

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2005/08/02

フィラデルフィア

製作年:1993年
製作国:アメリカ
監 督:ジョナサン・デミ

フィラデルフィアの一流法律会社に務めるアンドリューは重要な案件を任されたが、同時期にエイズと宣告される。その事を会社には黙っていたが、ある時、ウィラー社長から解雇されてしまう。不当な差別によるものと怒ったアンドリューは損害賠償と地位の保全を求めて訴訟を決意するが…。

第66回アカデミー賞でT・ハンクスが主演男優賞、B・スプリングスティーンの「Streets Of Philadelphia」が主題歌賞を受賞。第44回ベルリン国際映画祭でT・ハンクスが主演男優賞を受賞。

本作品でもっとも有名なのは、アンドリュー(T・ハンクス)がジョー(D・ワシントン)の前でマリア・カラスのアリアを聴く場面である。今回再見したことで発見だったのは、帰宅したジョーの家でもそのアリアが延々と鳴り響いていたことであった。その中で、ジョーは既に寝ている娘や妻を抱きしめる。生命の持つ尊さや美しさを目の当たりにし、ジョーは切ない感情を自分の家族によって癒そうとしたのではないか。

J・デミ監督は、全般的にクローズアップを多用し、登場人物達の微妙な心理の動きを力強く描いている。元々品格ある人物を得意とするD・ワシントンンなので分かりづらいが、ジョーという男はテレビCMに出ていたり事あるごとに名刺を配ったりとかなり俗っぽい人物である。その彼がこの裁判を通していかに変わっていくかが最大のポイントである。「問題はエイズではなく、ゲイ差別だ」と看破する場面も良い。

もっとも印象深いのは、図書館での場面。日常生活の差別とはこういうものだと痛烈に感じさせます。

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