2009/11/16

私の中のあなた

製作年:2009年
製作国:アメリカ
監 督:ニック・カサヴェテス

遺伝子操作によって生まれてくるドナーになるべく宿命をおった子供。といえば、さる著名な作家の小説を思い浮かべます(その作家とタイトルは、その小説のネタバレとなりますので、ここでは伏せておきます)。いかに重病人を救うためとはいえ、選択の余地もなく切り刻まれていく子供たちの行末に暗然といたしました。

本作品のアナ(アビゲイル・ブレスリン)もその一人。彼女はドナーを拒否すべく母親サラ(キャメロン・ディアス)相手に裁判を起こす。その真意は、注意深く見ていれば、すぐに分かってくるものだ。白血病の姉ケイト(ソフィア・ヴァジリーヴァ)を救うべく、あらゆる手立てを講じるサラ。不撓不屈、決して諦めないという精神は、本来、誉められるべき美徳であるが、果たして、そればかりではなのではないかというのが本作品の問い掛けだ。正しい、間違っているという二元論ではなく、どれを選んでみても正しい。問題は誰が選ぶのかということではないだろういか。

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2009/11/15

ジャージの二人

製作年:2008年
製作国:日本
監 督:中村義洋

“ワケあり父子(おやこ)の、何もしない夏休み”というセールスコピーであったが、何もしないというよりも何もできないと言った方が相応しいのではないか。北軽井沢の山荘へと避暑に来たというより、それぞれの苦悩の日々から逃げ出してきて、つかの間の休息をとっているような感じだ。父(鮎川誠)にしろ、息子(堺雅人)にしろ、それぞれに悩みを打ち明けることはしない。無表情の中で自問自答を繰り返す。買い物の後、山道で道の迷ってしまうエピソードが印象的。まさに息子の現状そのものだ。彼らの悩みは、1年経っても解決していない。だが、解決の糸口はどこかにある。ジャージは一人きりになって、それを見つけていくのだろうと思う。

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2009/11/12

マンマ・ミーア

製作年:2008年
製作国:イギリス/アメリカ
監 督:フィリダ・ロイド

本作品の妙はメリル・ストリープをキャスティングしたところにある。毎年のようにアカデミー賞にノミネートされる当代一の名女優が、単に歌って踊るというだけなく、幼女のようにベッドの上を飛び跳ねたり、勢い余って海に飛び込んだり、けばけばしいステージ衣装を着て大熱唱したりしてしまうのである。これを異質と言うべきか、怪演と呼ぶべきか、大いに迷ってしまうところである。ABBAのヒットナンバーを素直に楽しむミュージカル映画であるが、他のキャストもその歌声に感嘆するというレベルまでなく、最後までどこかズレてしまっている感じがぬぐえない。それはそれで独自の魅力となっているのだが・・・。

同じような趣向でビートルズのヒット曲で作られたミュージカル映画「アクロス・ザ・ユニバース」(2006)という作品もあるが、話のトーンはかなりシリアスだった。アーティストの特性が映画の色まで決めていくのだろう。

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2009/11/11

ベガスの恋に勝つルール

製作年:2008年
製作国:アメリカ
監 督:トム・ヴォーン

どんなにいがみ合っていようとも、最後に二人は惹かれあっていくのは最初から予想が付くし、実際そうなっていく。いかにもハリウッド映画らしいロマンティック・コメディーであり、気楽に見ることができる。定番化したドラマの中でしみじみと考えさせてくれるのは、自分の心と率直に向き合うことができる機会をいかに持てるかということである。

ジョイ(キャメロン・ディアス)にしろ、ジャック(アシュトン・カッチャー)にしろ、それまでの価値観に縛られすぎて本当に自分というものが見えなくなっている。スロットマシンで大当てした300万ドルのために、半年間の結婚生活を過ごさなければならない二人。無理に無理を重ねることで、お互いの違う一面を発見し改めて恋に落ちていくのであるが、それと同時に新しい価値観にも気付いていくのだ。再生していく道はどこから始まるか分からないのである。

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2009/11/08

空気人形

製作年:2009年
製作国:日本
監 督:是枝裕和

この映画の成功は、ペ・ドゥナをキャスティングできたことによる。日本の女優さんでも成り立つ話ではあるが、片言の日本語が、絶妙に“空気人形”の設定に合う。何より儚げな存在感を見事に体現している。心を持った人形と心をなくした人間たちの対比も興味深い。では、心とは何か? この世界に美しさを見出せることができるか否かというのが、本作品のテーマではないか。

ただ、難を言えば、“空気人形”がこの世界を体感していくところを省略し過ぎではないだろうか。いきなりレンタルビデオ店で働き始め、洋服をショッピングしている。その購入費用はどうしたのか。無論、是枝監督はその辺りのことも分かっていて、あえて省いているのだろうと思うのであるが、やはり、きちんと説明は欲しい。

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2009/11/04

あの日、欲望の大地で

製作年:2008年
製作国:アメリカ
監 督:ギジェルモ・アリアガ

マリアーナ(ジェニファー・ローレンス)の事を責めることはできない。無論、自業自得と突き放すこともできるのであるが、愛を拒絶して、自らを罰するように生きる姿は実に痛々しい。いかにもギジェルモ・アリアガ監督の脚本らしい時制を交錯させた巧みな語り口で炙り出されていくのは、彼女の原罪だ。

シルヴィア(シャーリーズ・セロン)と名前を変え、高級レストランのマネージャーとして社会的成功を収めていても、自傷行為を繰り返す。決して消し去ることのできない罪の意識。だが、自分の娘マリア(テッサ・イア)が訪ねてきて、彼女の転機が訪れる。果たして、幸福への道を歩むことができるのかどうか分からない。それでも、一歩前に踏み出したのである。何か変わっていくのは間違いない。

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2009/11/01

サマーウォーズ

製作年:2009年
製作国:日本
監 督:細田守

世界のインフラを支えるデジタル・ネットワークと生々しいヒューマン・ネットワークの対比。どちらかが良くで、どちらかが悪いという問題ではない。既にどちらもないと成り立っていかない世界となっているのだ。本作品のすぐれているところは、どちらの世界も魅力的に描かれているところだと思う。

ヒューマン・ネットワークで一番感動的だったのは、栄おばあちゃん(富司純子)の人脈。黒電話を使って、政財界の大物たちに“あんたならできる”との決め台詞で次々と指示を与えていく。これに対し、デジタル・ネットワークでの見せ場は、夏希(桜庭ななみ)の花札勝負。絶体絶命のピンチを救ったのは誰か? この辺りから涙が止まらなくなりました。

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2009/10/29

リミッツ・オブ・コントロール

製作年:2009年
製作国:アメリカ
監 督:ジム・ジャームッシュ

何かジム・ジャームッシュ監督の集大成と感じさせる作品でした。過去の作品の残像が次々と重なってきて、まさにジム・ジャームッシュの映画であるなぁと感じさせます。とはいえ、これまでの作品の中で一番難解である。

「世界で一番偉いと思っている男を殺す」。その指令を受けた“孤独な男”(イザック・ド・バンコレ)。スペインの各地でコードネームだけで呼ばれる仲間たちから指令を受け取り続ける。その細かい反復の連続。宇宙には中心も端もないという言葉には、どんな意味が込められているのか。謎が謎のまま、すべて明らかにならない。現実と非現実が錯綜する風景を色彩感覚豊かにとらえたクリストファー・ドイルの映像美に酔い痴れました。

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2009/10/27

キャデラック・レコード 音楽でアメリカを変えた人々の物語

製作年:2008年
製作国:アメリカ
監 督:ダーネル・マーティン

何気なくブルースのコンピレーション・アルバムで聴いていたマディ・ウォーターズ、リトル・ウォルター、ハウリン・ウルフ。彼らが一つのレーベルに活躍し、互いに影響を与えあっていたとは、本作品を見るまで知らなかったです。シカゴの伝説的ブルース・レーベル“チェス・レコード”の盛衰を描く本作品は、アメリカ音楽史に関心があれば実に興味深いドラマでありました。

しかし、個々のエピソードはただ事実をなぞっているような羅列であり、登場人物たちの心情が深く描ききれなかったのが惜しまれる。やはり、レーベルを始めたレナード(エイドリアン・ブロディ)の生涯をしっかりと中心に据え、個々のミュージシャンとの交流やエタ・ジェイムズ(ビヨンセ・ノウルズ)との恋愛感情を重点的に描くべきではなかったかと思う。

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2009/10/25

女の子ものがたり

製作年:2009年
製作国:日本
監 督:森岡利行

菜都美(深津絵里)が回想する子供時代に、森迫永依(小学生時代)、大後寿々花(高校生時代)という天才子役を持ってくる豪華な配役。それは主人公を際立たせるためなのでいいにしても、菜都美の友人二人に波瑠や高山侑子をキャスティングするのはどうかと思う。あまりにモデル然とした二人の美少女が、どうしてあれほどまでにドメスティック・バイオレンスに耐えなければいけないのか、よく分からなくなってしまうからです。

容姿が恵まれていることも一つの天分であるとすれば、別の道も容易に開けるはず。それが幸福への道であるとは限らないが、何も不幸を幸福と思いこむような道だけを進むことはなかっただろう。最後には感動的な逸話が用意されていて泣ける映画に仕上がっているけれど、もうひとつ共感度が低かったです。

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