2009/11/20

パラダイス・ナウ

製作年:2005年
製作国:フランス/ドイツ/オランダ/パレスチナ
監 督:ハニ・アブ・アサド

いまなお世界各地で起きている自爆テロ。その実行犯を描いた作品では「シリアナ」(2005)に衝撃を受けたが、本作品も相当に力のある映画である。イスラエルへの自爆攻撃を行うパレスチナの青年。サイード(カイス・ナシフ)とハーレド(アリ・スリマン)。この二人を主人公とすれば、自爆攻撃の犠牲者遺族から激しい抗議が出ることは止める術はないであろう。だが、本作品は彼らを英雄視して描いている訳ではない。そこに至るまでの様々な逡巡を見せることで、現実の一端を焼きつけようとしているのだ。こうした男たちが今日も命を散らしていく。

サイードの母を演じるヒアム・アッバスは、「シリアの花嫁」(2004)、「扉をたたく人」(2007)、「リミッツ・オブ・コントロール」(2009)など注目作品に出演を続け、注目しておきたい女優さんの一人です。

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2009/11/18

ヴィヨンの妻 桜桃とタンポポ

製作年:2009年
製作国:日本
監 督:根岸吉太郎

ファム・ファタールと言えば、男を破滅させる魔性の女、いわゆる悪女のことを意味する用語として使われることが多い。まさに、男にとっての運命の女、決して逃れる術もなく、ひたすら堕ちていくしかない。本作品の佐知(松たか子)も、その一人ではないかと感じた。才能に恵まれながらも、私生活では酒を飲み歩き、借金を重ね、浮気を繰り返す小説家の大谷(浅野忠信)。そんな身勝手な振る舞いにも、文句も言わず夫を支える佐知を、誰もが誉めるであろう。

だが、本当にそれだけであろうか。元々、破滅型志向があったとはいえ、佐知と家庭を持つようになってから、大谷のそれは加速されてしまっている。佐知が何も言わないから甘えているのだという一面もありつつ、別の側面も隠させているのではないか。佐知は、いわゆる良妻賢母という女性ではない。思い切った行動の裏側には、彼女自身、破滅志向を秘めているのではないかと予感させるのだ。無意識的にも男を狂わす何かを秘めた女ではないだろうか。

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2009/11/17

ハルフウェイ

製作年:2008年
製作国:日本
監 督:北川悦吏子

大学進学のため、東京へ向かう男の子と地元に残る女の子の話といえば、遠く太田裕美の「木綿のハンカチーフ」(1975)でも歌われたくらい決して珍しいモチーフではない。極めて今日的と思えたのは、ヒロ(北乃きい)は暴力的行動も加え強い調子で「東京に行くな」と言い、シュウ(岡田将生)も、早稲田進学を翻意し地元に残ると言ってしまうところである。ヒロのわがまま、シュウの優柔不断と言ってしまえばそれまでであるが、自分にとっての正解が見つからず、悩み続けるという高校生の日々は、過ぎ去ってしまった自分にとって非常に眩しく見える。

“halfway”(ハーフウェー)を間違えて、(ハルフウェイ)と呼ぶエピソードが印象的。二人はどんなに間違えても、修正の効く時間がたくさん残されているのだ。

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2009/11/16

私の中のあなた

製作年:2009年
製作国:アメリカ
監 督:ニック・カサヴェテス

遺伝子操作によって生まれてくるドナーになるべく宿命をおった子供。といえば、さる著名な作家の小説を思い浮かべます(その作家とタイトルは、その小説のネタバレとなりますので、ここでは伏せておきます)。いかに重病人を救うためとはいえ、選択の余地もなく切り刻まれていく子供たちの行末に暗然といたしました。

本作品のアナ(アビゲイル・ブレスリン)もその一人。彼女はドナーを拒否すべく母親サラ(キャメロン・ディアス)相手に裁判を起こす。その真意は、注意深く見ていれば、すぐに分かってくるものだ。白血病の姉ケイト(ソフィア・ヴァジリーヴァ)を救うべく、あらゆる手立てを講じるサラ。不撓不屈、決して諦めないという精神は、本来、誉められるべき美徳であるが、果たして、そればかりではなのではないかというのが本作品の問い掛けだ。正しい、間違っているという二元論ではなく、どれを選んでみても正しい。問題は誰が選ぶのかということではないだろういか。

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2009/11/15

ジャージの二人

製作年:2008年
製作国:日本
監 督:中村義洋

“ワケあり父子(おやこ)の、何もしない夏休み”というセールスコピーであったが、何もしないというよりも何もできないと言った方が相応しいのではないか。北軽井沢の山荘へと避暑に来たというより、それぞれの苦悩の日々から逃げ出してきて、つかの間の休息をとっているような感じだ。父(鮎川誠)にしろ、息子(堺雅人)にしろ、それぞれに悩みを打ち明けることはしない。無表情の中で自問自答を繰り返す。買い物の後、山道で道の迷ってしまうエピソードが印象的。まさに息子の現状そのものだ。彼らの悩みは、1年経っても解決していない。だが、解決の糸口はどこかにある。ジャージは一人きりになって、それを見つけていくのだろうと思う。

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2009/11/12

マンマ・ミーア

製作年:2008年
製作国:イギリス/アメリカ
監 督:フィリダ・ロイド

本作品の妙はメリル・ストリープをキャスティングしたところにある。毎年のようにアカデミー賞にノミネートされる当代一の名女優が、単に歌って踊るというだけなく、幼女のようにベッドの上を飛び跳ねたり、勢い余って海に飛び込んだり、けばけばしいステージ衣装を着て大熱唱したりしてしまうのである。これを異質と言うべきか、怪演と呼ぶべきか、大いに迷ってしまうところである。ABBAのヒットナンバーを素直に楽しむミュージカル映画であるが、他のキャストもその歌声に感嘆するというレベルまでなく、最後までどこかズレてしまっている感じがぬぐえない。それはそれで独自の魅力となっているのだが・・・。

同じような趣向でビートルズのヒット曲で作られたミュージカル映画「アクロス・ザ・ユニバース」(2006)という作品もあるが、話のトーンはかなりシリアスだった。アーティストの特性が映画の色まで決めていくのだろう。

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2009/11/11

ベガスの恋に勝つルール

製作年:2008年
製作国:アメリカ
監 督:トム・ヴォーン

どんなにいがみ合っていようとも、最後に二人は惹かれあっていくのは最初から予想が付くし、実際そうなっていく。いかにもハリウッド映画らしいロマンティック・コメディーであり、気楽に見ることができる。定番化したドラマの中でしみじみと考えさせてくれるのは、自分の心と率直に向き合うことができる機会をいかに持てるかということである。

ジョイ(キャメロン・ディアス)にしろ、ジャック(アシュトン・カッチャー)にしろ、それまでの価値観に縛られすぎて本当に自分というものが見えなくなっている。スロットマシンで大当てした300万ドルのために、半年間の結婚生活を過ごさなければならない二人。無理に無理を重ねることで、お互いの違う一面を発見し改めて恋に落ちていくのであるが、それと同時に新しい価値観にも気付いていくのだ。再生していく道はどこから始まるか分からないのである。

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2009/11/08

空気人形

製作年:2009年
製作国:日本
監 督:是枝裕和

この映画の成功は、ペ・ドゥナをキャスティングできたことによる。日本の女優さんでも成り立つ話ではあるが、片言の日本語が、絶妙に“空気人形”の設定に合う。何より儚げな存在感を見事に体現している。心を持った人形と心をなくした人間たちの対比も興味深い。では、心とは何か? この世界に美しさを見出せることができるか否かというのが、本作品のテーマではないか。

ただ、難を言えば、“空気人形”がこの世界を体感していくところを省略し過ぎではないだろうか。いきなりレンタルビデオ店で働き始め、洋服をショッピングしている。その購入費用はどうしたのか。無論、是枝監督はその辺りのことも分かっていて、あえて省いているのだろうと思うのであるが、やはり、きちんと説明は欲しい。

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2009/11/04

あの日、欲望の大地で

製作年:2008年
製作国:アメリカ
監 督:ギジェルモ・アリアガ

マリアーナ(ジェニファー・ローレンス)の事を責めることはできない。無論、自業自得と突き放すこともできるのであるが、愛を拒絶して、自らを罰するように生きる姿は実に痛々しい。いかにもギジェルモ・アリアガ監督の脚本らしい時制を交錯させた巧みな語り口で炙り出されていくのは、彼女の原罪だ。

シルヴィア(シャーリーズ・セロン)と名前を変え、高級レストランのマネージャーとして社会的成功を収めていても、自傷行為を繰り返す。決して消し去ることのできない罪の意識。だが、自分の娘マリア(テッサ・イア)が訪ねてきて、彼女の転機が訪れる。果たして、幸福への道を歩むことができるのかどうか分からない。それでも、一歩前に踏み出したのである。何か変わっていくのは間違いない。

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2009/11/01

サマーウォーズ

製作年:2009年
製作国:日本
監 督:細田守

世界のインフラを支えるデジタル・ネットワークと生々しいヒューマン・ネットワークの対比。どちらかが良くで、どちらかが悪いという問題ではない。既にどちらもないと成り立っていかない世界となっているのだ。本作品のすぐれているところは、どちらの世界も魅力的に描かれているところだと思う。

ヒューマン・ネットワークで一番感動的だったのは、栄おばあちゃん(富司純子)の人脈。黒電話を使って、政財界の大物たちに“あんたならできる”との決め台詞で次々と指示を与えていく。これに対し、デジタル・ネットワークでの見せ場は、夏希(桜庭ななみ)の花札勝負。絶体絶命のピンチを救ったのは誰か? この辺りから涙が止まらなくなりました。

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