2009/07/09

ハムナプトラ 3 呪われた皇帝の秘宝

製作年:2008年
製作国:アメリカ
監 督:ロブ・コーエン

ジェット・リー。ミシェル・ヨー。アンソニー・ウォン。アジア映画界の至宝と言ってもよい俳優が三人も出演しているのに、なんと平坦で盛り上がりに欠ける作品となってしまったことか。彼らにしか出せない存在感を削いでいるようにも感じられ、これがハリウッド映画の悪癖というものでしょうか。他の役者が演じても映画の出来は変わらないと思えるのであれば、出演している意義はないであろう。せっかくジェット・リーとミシェル・ヨーが敵同士の設定なのだ。火の出るようなカンフー・アクションを期待しない訳にはいかない。それなのに、迫力のない剣戟でお茶を濁す程度とは落胆甚だしい。

もちろん、主人公はリック(ブレンダン・フレイザー)たち一家なので、彼らのエピソードでそれなりの映画にはなっているのであるが、アジア組の見せ場が不足しバランスの悪い作品であったと思う。

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2009/07/08

大統領の陰謀

製作年:1976年
製作国:アメリカ
監 督:アラン・J・パクラ

新聞報道をきっかけに辞任に追い込まれた現職の大統領。欺瞞、偽装を拭い去り、隠された真実を追い求めた新聞記者。かれらを擁護する腹の太い編集デスク。かつてそんな男たちが存在していたのだ。ウォーターゲート事件の真相を突き止めたワシントン・ポスト紙記者の活躍を描いた本作品は、心奮えるような緊迫感と迫力に満ちたまぎれもない傑作である。そして、時間が経てば経つほど神話性が高まっていく予感がする。

例えば、こんな権力の犯罪を追求できる新聞記者、それを許す新聞社が、いまこの時代にあるのだろうかという思いがある。新聞社の変貌は「消されたヘッドライン」(2009)でも明らかであったが、経済的余裕のなさが報道の根を啄ばむ。ボブ・ウッドワード(ロバート・レッドフォード)やカール・バーンスタイン(ダスティン・ホフマン)のような真実を追い求めるジャーナリズムの魂が、消されることなく残っていてほしいと祈るのみだ。

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2009/07/06

愛を読むひと

製作年:2008年
製作国:アメリカ/ドイツ
監 督:スティーヴン・ダルドリー

映画を通して、一人の生涯を俯瞰してみることができる。本作品のヒロイン、ハンナ(ケイト・ウィンスレット)も場合もそうだ。彼女がその人生で何を選んできたか知り、それは正しくないと論評することもできる。ハンナは一つの秘密を守り続け、重い罪を背負っていく。時代も国も違う自分には、そんなことぐらいでとも思えるが、この映画には描かれていない部分こそ思いやらなければいけない。例えば、どんな環境で彼女は生まれ、どんな幼少時代を過ごしたのかということ。孤独に生きて、教育を受ける機会もなかったのではないだろうか。絶対に自分の弱さを見せてはいけない。その頑なな姿勢が彼女の生活を守り続けてきたのだ。戦犯裁判でも優先されてしまうくらいの強固な思い。そうした選択を安易に批評することはできないし、実際、その事実に一人気が付いたマイケル(デヴィッド・クロス)も沈黙を守る。

本作品はここから、様々な含みを残す。成人したマイケル(レイフ・ファインズ)が再び朗読を始めることにより、ハンナは誰にも頼らず学習を始める。ここまではいい。感動的な交流である。だが、それだけで終わらない。何故、ハンナの手紙に対して返事を出さないのか。あれだけのテープを送りながら、面会に行って直接朗読をしてあげようとしないのか。一定の距離を崩そうとしない姿勢を貫くマイケル。少なくとも、それはハンナの望むものではなかったはずだ。彼女の孤独は変わることなく続き、最後の決断になってしまったのではないだろうか。

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2009/07/05

スター・トレック

製作年:2009年
製作国:アメリカ
監 督:J・J・エイブラムス

直感と論理。その対立する二つの概念をジェームズ・T・カーク(クリス・パイン)とスポック(ザカリー・クイント)が体現している。直感で行動を決めることと、論理で行動を決めることは、決して矛盾しているものではない。その判断時間の長短の差だけではないだろうか。直感で決めたからと言ってすべて間違いということではないし、論理で決めたからといってすべて正しいとは限らない。その精度は判断する人物の資質にかかってくる。

本作品を興味深く感じられるのは、ジェームズにしろ、スポックにしろ、まだまだ経験が足りず、二人とも挫折を繰り返すシーンが丹念に描かれているからだと思う。時に対立を繰り返すが、本質的には同じものを性根に抱えている二人である。ロミュラン人ネロ(エリック・バナ)との戦いの中で、共感を覚えるところが眩しい。

それにしても、ウィノナ・ライダーが出演したいたとは、エンド・クレジットを見るまで全く気が付かなかった。ゲスト出演なのかもしれないが、それでもあまり話題になっていないのが寂しかった。

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2009/06/29

真夏のオリオン

製作年:2009年
製作国:日本
監 督:篠原哲雄

勿体ないではないか。何度も出撃を迫る回天搭乗員に対し、そう答えることで決然と拒絶する。中津航海長(吹越満)から自分の作戦命令に対して異議を唱えられるシーンも繰り返されるが、怯むことなく指示を貫徹する。危機に瀕していても食事の命令を下すことを忘れない。この倉本艦長(玉木宏)がすこぶる魅力的なのは、自分の信念を貫きとおしているからだ。それは、死ぬために戦っているのではなく、生きるために戦っているんだということ。限られた時間と兵力の中で、最大限の効果を上げられるものは何かを模索し、常識にとらわれない奇策を生み出す。それは、何も戦時中に限ったことではなく、いろんな局面で応用できる思考法である。“真夏のオリオン”という聖なる祈りの込められた楽譜の軌跡も感傷的であり、なかなか見応えのある作品でありました。

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2009/06/27

ターミネーター 4

製作年:2009年
製作国:アメリカ
監 督:マックG

同じ物語を語るにも自分ならこういう構成にした方がいいと明らかに思える場合があるが、本作品もその一つであった。例えば、主人公ジョン・コナー(クリスチャン・ベイル)がなんとも魅力に乏しい。彼が反乱軍のリーダーとしてどれほどの資質があるのかさっぱり分からないし、指令本部を軽視して勝手な行動を取ること甚だしく、自己中心的人物にしか見えてこないのである。一方、死刑執行後、献体された肉体が機械化され15年ぶりに目覚めたマーカス(サム・ワーシントン)の方が謎に満ちていて陰影深い設定だ。

何故、死刑になるほどの罪を犯したのかなど、彼の後景が明らかにされないのは描写不足だし、“ニ度目のチャンスがあるのか”という主題もあまり効果的でないことが惜しまれる。その辺りをきちんと整理し、ジョン・コナーは伝説の男として脇に回り、マーカスを主人公としてしっかり位置づけた方がはるかに面白くなったと思う。カイル・リース(アントン・イェルチン)との交流も中途半端。彼の救出もマーカス単身でスカイネット本部へ乗り込んだ方が良かったし、T-800との戦いも迫真のバトルになったことであろう。

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2009/06/24

レスラー

製作年:2008年
製作国:アメリカ
監 督:ダーレン・アロノフスキー

人は大切な何かを諦めたとき、大人になるのだと思う。生活のため、現実のため、不運のため、自ら描いた夢を消し去る岐路に立たされるときがある。それを受け入れて大人になるか、拒絶して夢を追い続ける子供のままでいるか。ランディ(ミッキー・ローク)は、80年代に頂点を極めた一流プロレスラーであった。だが、20年後の今はどうだ。老体に鞭打ちながら小さな地方興行に出場し現役を続けている。金銭にも困り、トレーラーハウスからも締め出されてしまう始末である。しかし、ついに心臓発作で倒れてしまい、引退を受け入れなくてはならない。

その間にも、分岐点は何度かあったことだろう。しかし、プロレス以外の生き方を拒否してきたと思われる。娘ステファニー(エヴァン・レイチェル・ウッド)やキャシディ(マリサ・トメイ)との距離の縮め方も、あまりに性急すぎる。そのために大切な関係も破綻してしまう。現実社会で生きるにも見えないルールがあり、それを学ぶ機会を逸してしまったのだ。自己憐憫の中、再びリングに向かうランディ。彼は、最後までレスラーの夢を追い求め、現実社会を拒絶した子供である。その選択を嘆くことなく殉じていった男である。だから、幕切れのダイビングが清々しく感じるのだ。

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2009/06/23

ハイスクール・ミュージカル 2

製作年:2007年
製作国:アメリカ
監 督:ケニー・オルテガ

余りにも底の浅いシャーペイ(アシュリー・ティスデール)の策略で、恋人ガブリエラ(ヴァネッサ・ハジェンズ)や仲間たちから孤立してしまうトロイ(ザック・エフロン)。大学の奨学金を得るという目的のためには、やりたくないことでもあえて目をつぶり、自分の心を押し隠そうとする。ここにもう一人、同じような人物がいる。カントリークラブの支配人である。シャーペイのわがままな命令に嫌な顔を隠しながら従っているのだ。スポーツ万能でルックスも良いトロイを支配下に置こうとする思いは、いつ気まぐれで変わるか分からない。トロイにとって、これはチャンスではなく、転落への一歩だったと思う。真のチャンスとは、仲間から応援され、盛り立ててもらってこそ、巡ってくるものだと思う。

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2009/06/21

ハゲタカ

製作年:2009年
製作国:日本
監 督:大友啓史

“お前は一体誰なんだ”という台詞が何度も反復されている。一方、劉一華(玉山鉄二)が守山(高良健吾)に熱く語る“誰かになるんだ”という台詞も、対になるように存在している。何故、絶望的な日本のマーケットに見切りをつけた鷲津(大森南朋)が、芝野(柴田恭兵)の要請を受けてアカマ自動車のホワイトナイトになるのか。何故、劉一華が圧倒的な中国資本を背景にアカマ自動車を買収しようとするのか。何故、三島由香(栗山千明)は業務命令を無視して派遣労働者のデモを取材しようとするのか。心理描写にかなり不足も感じられるが、それぞれの自分の心にある誰かになろうと葛藤してことが分かる。それがうまくいくとは限らない。古谷社長(遠藤憲一)のようにすべて裏目に終わってしまうこともあるのだ。それでも、誰かになろうとする思いは誰にも止められないのである。

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2009/06/19

夏時間の庭

製作年:2008年
製作国:フランス
監 督:オリヴィエ・アサイヤス

美しい庭園が広がる瀟洒な邸宅。日常生活で何気なく使われる貴重な美術品の数々。名のある画家だった大叔父の思い出。母エレーヌ(エディット・スコブ)は、こうした世界をずっと守ってきた。しかし、永遠に続くものなどない。三人の子供たちは、それぞれの生活があり、もはや、この世界を継承する余力がない。この現実をいかに受け入れるか。彼女は孤独の時間の中で、しっかりと見定めたのだろう。その精神力に感服する。家も美術品も売却処分することに難色を示す長男のフレデリック(シャルル・ベルリング)であっても、莫大な相続税や遺産を賄うことができないのだ。なすすべなく母の遺言を守るしかない。こうして、母の世界は閉ざされていく。なんとかしたいのになんともできない無力感。その悲哀が胸いっぱいに広がりました。

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